シリーズ 木の名前の由来 〈 その13/ナンテンとヒイラギナンテン〉

※ その時節折々の樹木について、名前(和名)の由来を中心に解説しています。 樹木名の語源や、渡来時期等の

 歴史や文化、ローカルネーム、トピックス等、いろいろ関連付けながら雑学的に覚えて知識の裾野を広げましょう!

 

◇ナンテン(南天)はメギ科ナンテン属の常緑低木で樹高は2~3m、花期は5~6月。

中国からの渡来植物とみられ、空海が唐から持ち帰ったナンテンの杖を石垣に突き刺し

たら根付いた、とも伝えられる。

 名前は中国での名前“南天燭”や“南天竹”に由来する。「燭」は実の赤い色を灯火に例えたもので、「竹」は株立ちが竹に似ているため。日本では「燭」「竹」が省略され、「南天」を音読みしてナンテンになった。

◇江戸時代には、ナンテンの音が「難転」(難が転じる)に通じることから、縁起が良い植物とされた。

 また、実、葉、樹皮は薬用に利用されてきた。果実は煎じて咳止めに、葉は強壮薬に利用されているが、食物の腐敗防止効果もあることから、葉は赤飯の重箱に載せたりしている。また、樹皮には抗菌作用のある成分が含まれるなどの効用もあり、ナンテンは火災除け、魔除け(難転)として、よく家に植えられる。

◇分布と自生地に関しては、図鑑にはおおかた茨城県以西の本州、四国、九州に分布し、庭木に利用される、と記載されているが、東北地方でも庭木としてよく植えられており、冬場の赤い実が軒先などで目立ち、雪のウサギにナンテンの実の目玉をつけて遊んだりしたものである。

◇離弁花。白い花をつけた円錐状花序が枝先につく。花びらは3枚ずつが

 多数並び、最終の大きな6枚が開くと、外側のものはすべて散る。

  葉は互生。長さ20~50cmの3回奇数羽状複葉で、大きい葉では小葉の

 総数が100枚を超える。小葉は長さ3~7㎝、先は尖る。

  実(液果)は10~11月に赤く熟す。実が白いものをシロナミンテンという。

 

❖ 近縁の「ヒイラギナンテン(柊南天)」はメギ科ヒイラギナンテン属で、別名「トウナンテン」とも呼ばれ、中国~ヒマラヤ・台湾原産で、17世紀に渡来し、こちらも庭木としてよく植えられている常緑低木で、高さ3mほどになる。

・花期は3~4月、枝先に長さ10~15cmの総状花序の黄色い花を多数つける。

・葉はナンテンの葉に似るが、小葉の縁にトゲがありそれがヒイラギの葉に似る。

・実は6~7月、直径約7mmのほぼ球形~楕円形の青みかかった黒紫色に熟す。

※ヒイラギは魔除けに用いられ、ナンテンは「難を転じる」とされるので、両方を盛り込んだヒイラギナンテンの名前は縁起がよいといえる。

                                               ~ 『山溪名前図鑑 樹木の名前』 他 より一部引用し、編集 ~