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■代々木公園のサイカチの樹勢回復作業を実施しました!

3月8日(火)、東京都渋谷区の代々木公園のサイカチの剪定作業と土壌改良作業を当会作業部会有志メンバー10人が参加して実施しました。

▲都立代々木公園丘の広場サイカチ
▲都立代々木公園丘の広場サイカチ

◇作業概要としては次のとおりです。

  1.枯れ枝や重なり枝等の不要枝切除のうえ骨格剪定を実施

  2.長谷川式土壌貫入計を使って土壌硬度を測定

  3.ワカホ21袋を半径3mの人止め柵内外に施用

    ①柵内はエアースコップを使って深さ30~40cm程度まで

     土壌の膨軟化を図りながらワカホを混入撹拌

    ②柵外1m程度は、つぼ掘り状に縦穴を開け、エアで土の

      ほぐし作業を実施

◇土壌の状態としては人止め柵で囲われている半径3mの範囲

  は柔らかい状態を保っていたが、柵外はガラ混じり土であり、

  踏圧により相当に固結した状態であった。

◆代々木公園のこのサイカチは藪会にとって記念すべきとても大事な樹です。藪会式不定根誘導による樹勢回復技術が緑化関係者から注目され、その驚嘆すべき大いなる成果として、このサイカチの治療を施したあとの太く成長した不定根の写真が(財)日本緑化センターの機関紙グリーンエージの2011年(平成23年)2月号の表紙を飾っています。〔前頁下欄左側の写真参照〕

 近年入会した新たな会員も増えてきていることから、改めてこの代々木公園のサイカチについての本会の関わりや治療等の経緯にふれておきます。

 ◇平成12年2月、第1回不定根誘導による樹勢回復治療が始まった当時のサイカチは、枯死寸前の状態であったが、故内田親方の見立てでは推定樹齢300年で、もともとは樹高12m、幹周3.3m、枝張10mの巨樹であった。根元付近の樹幹には腐朽により人がすっぽりと収まるほどのウロ(空洞)ができていて、鉄筋入りのモルタルが100kg以上充填されていた。

◇藪会の治療ではそのモルタルや腐朽部を取り除き、そこに50袋の「キノネデール」を充填して不定根の発生を促し、植栽地盤には土壌改良材「ワカホ」を投入するという樹勢回復治療を施したのである。

◇その後、平成15年、18年、21年と3年ごとに治療部位を開いてその回復状況の検証と再治療を行ってきた。経過は良好に推移し、11年後の平成23年1月の5回目の検証作業をもって目標を達成できたと判断して幹の不定根部分のキノネデールを撤去して開放することとした。またその際に、広く一般の方にも知っていただくべく、藪会の名前が入った説明看板を設置している。

◇しかしその年(平成23年)秋に、台風による猛烈な風によって太枝が折損してしまうという手痛い被害が発生した。そして翌平成24年に被害部の手当を行い、それをもって一旦治療は終了となった。

◆今回は10年ぶりに治療にあたることができました。この先も継続的に携われるように公園サイドとは良好な関係を保っていくことが肝要です。そのことも踏まえ、今後とも定期的に今回のような作業を実施していくと共に、経過観察もしっかりと行っていきたいと考えています。

 

▲グリーンエイジ平成23年2月号表紙
▲グリーンエイジ平成23年2月号表紙
▲サイカチの樹勢回復作業完了後の集合写真
▲サイカチの樹勢回復作業完了後の集合写真

▲染色家の柚木沙弥郎さん作「いのちの樹」
▲染色家の柚木沙弥郎さん作「いのちの樹」

《関連しての話題です》

(1) サイカチという樹木は代々木の地名の由来に関係しており、「この地で代々、木(サイカチ)を栽培していた」ということから「代々木」となったのだそうです。

(2)世界的染色家の柚木沙弥郎さん(御年100歳)が、治療中のサイカチを見てインスピレーションを得て「いのちの樹」という作品を製作されていらっしゃいます。(←左の絵)

 代々木公園のサイカチのようにここまでの不定根誘導が行われた樹は他に類を見ず、また、場所柄としても全国的に知られている都心の公園内という恵まれた立地状況にあります。

 公園利用者をはじめとした多くの人の目に触れる機会も多いこのサイカチは藪会の活動を広く知ってもらうためにも重要な樹と言えます。

 藪会会員でこのサイカチをまだ見たことがない方は、是非、代々木公園のこの場所へ足をお運びのうえ、じっくりとご覧になってください。