シリーズ 木の名前の由来  〈 その2/ツバキ 〉  

※ 前号から、その時節折々の樹木について、名前(和名)の由来を中心に解説しています。 樹木名の語源や、渡来時期等の

 歴史や文化、ローカルネーム、トピックス等、いろいろ関連付けながら雑学的に覚えて知識の裾野を広げましょう!

 中国では「椿」は主にセンダン科のチャンチンを意味し、ツバキは「山茶」と書く。

 しかし、日本ではツバキが春の花であることから、「椿」の字が当てられた。

 ツバキの語源は諸説あり、光沢のある様子をいう古語“ツバ”に由来するとか、葉のつやから、“つやのある葉の木”という意で、「ツヤハキ」の意味であるなどと

いわれてきた。

 近年は朝鮮語でツバキを意味する「トンベック」が転じたものではないかとも

いわれている。 「トンベック」は漢字では“冬柏”と表記され、韓国の歌手チョー・ヨンピルが歌って日本でも大ヒットした「釜山港へ帰れ」で歌われているツバキは、釜山の冬柏公園のツバキであるという。

 

 江戸時代の園芸ブームではいろいろなツバキの変種が珍重された。

18世紀初頭にツバキをヨーロッパに初めて紹介したのは、イエズス会の宣教師で博物学者でもあったゲオルグ・ジョセフ・カメルといわれており、Camellia というツバキの英語名ならびに属名は彼の名前にちなむ。その後、茶の交易が盛んになり、それらの商人がいろいろなツバキをヨーロッパに伝え、英国での栽培が盛んになった。19世紀初頭にはナポレオンの最初の妻ジョセフィーヌが所有したマルメゾンの城に英国から輸入したツバキが植えられ、ツバキをこよなく愛したジョセフィーヌは「椿姫」と呼ばれた。その後、ツバキの人気はさらに高まり、1853年に発表されたヴェルディ作のオペラ『椿姫』はこうしたツバキのブームを背景として登場した作品である。冬も葉が青々と美しく、春の早い時期に華やかに開花するツバキは、冬の長いヨーロッパの人たちの心をがっちりとつかんだのである。

 ~ 『山溪名前図鑑 樹木の名前』 より一部引用し、編集 ~