ハナイカダの民俗(ヨメノナミダ)

 ご存知の方もいらっしゃると思われますが、倉田悟(1922-1978)氏と言う植物学者が居た、全国の

 山村を歩かれ、樹木の方言を調べられ、その内容を残されている。

 樹木の方言を調べると同時に樹木に関わる民俗についても調べられている。

 

 倉田悟の樹木民俗誌の中にハナイカダのくだりが有る、原文のまま紹介する。

 

 むかしむかし、ある村に金持ちの一家があった。姑と嫁と孫が一緒に暮らしていたが、姑は孫にば

 かり美味いものばかりを与えて、嫁にはくれない、そこで嫁が「私にも下さい」と掌を差し出した。無

 情な姑は囲炉裏の燠を火箸で取って嫁の掌に載せた。嫁は急いで燠を払い除けたが、みるみる

 掌の真中に火傷の火膨れが出来たことはもちろんである。その後も姑にさんざんいじめられて、とう

 とう嫁は死んでしまい、さらのこの一家も死に絶えてしまった。その屋敷跡にハナイカダの木が生え

 て来て、毎年葉上に果実を結び、火膨れになった嫁の掌を里人に思い出させた。

 誰いうとなくこれは嫁の化身に違いないとうわさされ、ヨメノナミダとこの木が名付けられたというので

 ある。

 

 ※ ハナイカダ

   ミズキ科ハナイカダ属 落葉低木  山地に生え高さ1~2mになる。春5~6月頃葉の主脈の中

   央に淡い緑色の小さな花をつける。雌雄異株で雄花は数個が集まってつき、雌花は通常1個

   (まれに 2~3個)つく、果実は直径7~9mmの球形で黒く熟す。若葉は山菜として利用される。

   庭木や花材として利用され、北海道南部から九州まで分布する。